評価:
デカルトやニュートンから始まった、
「自然界は数学的構造を持っている」という、
いわゆる機会論的自然観は、
分子生物学では不都合が生じるらしいですね。
では「21世紀の科学革命といわれるバイオ科学を
どうとらえるべきか」という問いには、残念ながら、
当書では、明確に応えられていません。
塩野七生さんなど、バイオ以外の分野からヒントを
もらって論を展開してはいるのですが、
やはり基本コンセプトが借り物なので、
接ぎ木をしているような不安定な印象が残ります。
他の分野からヒントを得て、自分の分野を深めるより、
自分の分野で得た視点で、他の分野を切った方が
論点はスッキリするんじゃないか知らん。
例えば、養老猛司さんの論は、自身の解剖学を立脚点にして、
社会や文学にメスを入れているので、安定感があるんでしょうね。
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