評価:
時代小説など読むと、幕末から明治維新まで、
風潮がくるくる変わったように思える。
例えば、攘夷から開国など、正反対じゃねぇか、
と思ってしまうわけ、オレは。
で、この種のことは、自分でいくら考えても、
答えらしきものが見つからないえわけで。
その試案としては、福沢諭吉の「文明論之概略」で
出会うことができた。
まず、それには、本書に書かれている「近因」と
「遠因」について触れる必要がある。
薪は、炭素と酸素の化学反応により燃える。
人は、酸素を吸い、血中の炭素と化合して二酸化炭素を吐く。
「近因」を見ると、ずいぶん趣が違うが、
「遠因」である酸素の作用は共通している。
そして、明治維新の不思議も、
この「近因」と「遠因」で説明されている。
攘夷論は唯革命の嚆矢(こうし)にて、所謂事の近因なるのみ。
一般の智力は、初めより赴く所を異にし、其の目的は、復古にも
非ず、又攘夷にも非ず。復古攘夷の先鋒に用ひて旧来の門閥専制を
征伐したるなり。故に此の事を起こしたる者は王室に非ず、其の仇
とする所の者は政府に非ず、智力と専制との戦争にして、此の戦を
企てたる源因は国内一般の智力なり。之れを事の遠因とす。
攘夷論や開国論、平田国学などは「近因」であり、
専制に対する智力が「遠因」ということになる。
では、智力とは何か?
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