評価:
本書を再読してみる。
村上春樹は、自分の小説の糧にするために、カポーティとフィッツジェラルドを翻訳している(深い二重性を持っている)が、カーヴァーの翻訳は、おさおらく愛着によるものだと思う。
「ペルソナ」や「シンクロニシティ」とう言葉が出てくる。村上春樹は、ユングをけっこう読んだ人だと思う。
「風の歌を聴け」は、最初に英語で書き、それから日本語に訳した。
最初に英語の構造で作り、あとから日本語を埋め込んでいった、と言えるだろう。興味深いのは、自分の語彙の範囲内で英語が書ける、という発言は心強いと思った。
以下の発言は参考になる。
『アンダーグラウンド』はノンフィクションということになっているけれども、僕にとってはある意味ではれっきとしたフィクションなんですね。いちおう人の言っていることをそのまま書いてるんだけれど、その息づかいがちょっとずつ変わってくるんですよ。読者に少しでも自然に受け入れてもらえるように、僕が書き換えてるから。でも、言っていることはそのままだし、言った本人が読んでも、変えているということは、絶対に分からないと思う。(P237)
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