評価:
河合隼雄先生によると、
思春期だけでなく、中年期にも精神の変調期があるそうだ。
ユングの場合、通常より深刻で、中年期に精神分裂症になり、
神懸かり的な体験をした(自分で治したというハナシも凄いが)。
ヘッセが50歳の時書いた「荒野のおおかみ」は、
中年期の精神の危機をストーリーを書くことで救われたのではないか、
という気さえする。
その点、「デミアン」は青年期の精神の遍歴を描いたもので、
中年の小生としては、「おおかみ」ほど、パンチが効いていない。
ただ、第5章からは、いい。凄い文章もある。
「むしろ、私たちの内で働いているのと自然の内で働いているのとは、
同一不可分的な神性である。外界の世界が滅ぶようなことがあったら、
私たちのうちのひとりが世界を再建することができるだろう。なぜなら、
山や川、木の葉、根や花など、自然界のいっさいの形成物は、私たちの
内部に原型を持っており、永遠を本質とするところの魂から発している
からである」
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