評価:
改めて読んでみて、良い本だと思った。
めったに取材に応じない村上春樹の考えに触れる意味でも、
貴重である。テーマは翻訳なのだが、文章の考え方の参考になる。
ライター、あるいはライター希望者は読んだ方が良いだろうな。
以下、参考になる発言を列挙しておこう。
・ビートと、うねり、グルーヴ感(前のめりになる文章の勢い)
が大切(P45、46)
・「美しい日本語を書こうみたいなものは捨てて、原作者の心の
動きを、息をひそめてただじっと追うしかないんです。もっと
極端に言えば、翻訳とはエゴみたいなものを捨てること。僕は
思うんです。うまくエゴが捨てられると、忠実でありながら、
しかも官僚手にはならない自然な翻訳が結果的にできるはずだと
思うんです」(P63)
・「テキストがいちばん大事であるということ。テキストのみを読むことに よって、その作家像とかいろいろなものを自分の想像力の中で再構築して
いく」(P69)
・「ネイティブの人に聞くのはよくやることなんだけれど、三人聞いたら
三通り意味が違うってことはありますよね」「それよりは、自分でとこ
とん真剣に考えたほうが確かな場合が多いみたいです」(P76)
・「だから、僕はポール・オースターの作品をあえて翻訳しようと思わない
わけ。なぜかというと、僕にとって翻訳するというのは、何かを真剣に
学びとろうという作業なんですよね」(P87)
・トーンが重要(こちらは、タグボートの代表者の著書にも、頻繁に出て
くる。トーン&マナー)
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