評価:
「体の贈り物」の、エイズ患者のホームケア・ワーカーの話に対し、こちらは、末期ガンに犯されたお母さんを看取るまでの話。前者より、身内を描いた後者の方が、淡々とした印象がする。訳者の後書きによれば、タイトルは「Excerpts from a Family Medical Dictionary」、直訳で「家庭医学事典からの抜粋」らしい。それぞれの章に、貧血、薄暮睡眠、、、といった家庭医学事典の項目を付けたことから察すると、意識的に、対象(つまり、お母さん)と距離を置いて描こうとしたのかも知れない。翻訳は柴田元幸さん。卒論の関係で、小生のメイっ子は、柴田訳でポール・オースターを読んでおり、同氏の訳本を送ってあげようと考えていた。文章が緻密で感動的な「体の贈り物」を送ってあげたかったのだが、エイズ患者という微妙なテーマなので、あえて、本書を送ることに決めた。ページ数が少なく、1日あれば読めることも、こちらを選んだ理由だ。
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