評価:
漱石の最高峰の作品だと思った。次に「こころ」、
その次に「行人」「道草」が続くだろうか。
本作品の特徴は、人が多く登場することだ。
それも、構成が微に入り、細に入っている。
心理の描写は、他の作品の追従を許さないだろう。
女性の心理を描いたのは、この作品だけだと思っていたが、
岩波の全集の解説を読むと、本作品まで深く掘り下げられていないものの、
「道草」にも描かれているようだ(そうだったかなぁ。。)
温泉地の景色から、津田の過去の概念を描いた暗喩は見事だと思った。
小林を通じて、社会主義が描かれている。この辺は、漱石作品にはない。
いわゆる「修善寺の大患」以降の作品と同様、近代人のエゴの救いようのなさが描かれているが、妹の、お秀により、救われる部分がある。
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