評価:
リーマンショック後、日本の株価は下がった。
ただ、これは、サプライムローン関連で、
金融機関が大きな損失を出したから、
という訳ではない。
円高による
輸出産業の収益の低下による所が大きい。
いや、それよりも、リーマンショック以前の
不自然な円安の方に、着目すべきである。
実際に、07年の夏頃の円レートは、
実質実効為替レートでみると、
1985年のプラザ合意直前のレベルである。
ところで、この著しい円安は、
政府の政策による所が大きい。
ひとつは、低金利政策である。
金融の超緩和策によって、日本と外国の金利差が拡大した。
そのため円を売って、
ドルなどの高金利の通貨で運用する
取引が増えた。これは、円安を引き起こす。
もうひとつは、為替介入である。
日本政府は1995年頃からドル買い介入を行ない、
円高への移行を阻止して来た。
2003〜04年には、
合計で約40兆円の未曾有のドル買い介入がなされた。
ちなみに、財務省発表によると、
2008年、2月末の日本の外貨準備高は、1兆80億である。
(一般会計の長期国債残高の約2割に当たる。
為替レートの変化について、政府自信が大きな利害関係者に
なってしまった)
教科書的で言えば、
国債収支の不均衡は、為替レートが変化して調整される。
したがって、外貨準備が巨額であることは、
為替レートによる自助調整効果を否定することを意味する。
いずれにせよ、円安政策は、
欧米との協調介入が無ければ効果がない、
と言われているし(欧米は、輸出を増やす方針であり、
自国の通貨が弱くなることを容認している)、
何よりも、本質的な問題の解決にはならない。
現在必要とされることは、日本の産業構造を再編することである。
それは、脱工業化の進展に他ならない。
日本は、これまで、
金融の要因が、実物の要因に与える影響が考えられていた。
即ち、金融を緩和して為替レートを円安に誘導し、
それによって輸出の増加を期待する。
しかし、いまは違う。
金融政策の変更は、世界的な大規模な連鎖反応を引き起こす。
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