評価:
最澄は、越州の順暁から密教の書を写して持ち帰った。
だが、順は傍流の人であった。
一方、空海は金剛と大日の両方を一身に集めた(即ち本流の)
志果に密教を学んだ。
最澄は空海に手紙を送り、
唐から持ち帰った書の写しを借りる事を請うた。
しかし顕教に対し、
密教は師から直接教えを請い自分で体得するものである。
その点で、空海は最澄を疎んじたかも知れない。
本書は政治的、社会的な視点から空海を眺めた感じが強い。
空海よりも、むしろ平城、平安初期の様子を知る入り口として、
興味深い。とりわけ、平城と嵯峨の政治的なやり取りは面白い。
司馬氏の魅力は、政治、戦さに関する説得力にあるのではないか。
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