評価:
中央公論の日本の名著「山片蟠桃、海保青稜」の解説。
とりわけ、前段は、とても有益だった。
孔子の思想は、仁という内面的道徳と、
礼という客観的文化の二つの柱から成り立つ。
前者は孟子に、後者は荀子に引き継がれている。
江戸時代の代表的な儒者としては、
前者は伊藤仁斎、後者は荻生徂徠である。
徂徠は、礼楽制度を明らかにするには、
聖人の営為の客観的表現である辞と事
(どういうことだろう?)
の科学的分析を行なう以外にない、とし、
朱子学者のように四書ではなく、
五経中心主義をとった。
また朱子の、
ひとつの価値判断からまとめた「通鑑綱目」より、
事実ばかりの、司馬光の「資治通鑑」をすすめた。
一方、理の概念を、
朱子学のような、人や天の世界に適用せず、
事物の世界に限定した。
では、徂徠以降、合理的思唯はどのように形成され、
実証主義と合理主義の結合は、どのように成されたか。
山片蟠桃、海保青稜には、その結合がみられ、
さらに言えば、その原理的解明は、
福沢諭吉や西周の啓蒙主義にまで持ち越される。
両者とも、論語や孟子を全てとはせず、
良いところだけ取り入れれば宜しいという立場である。
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