評価:
つらつら読んでみた。興味深い視点が3つほどあった。
ひとつは、個人と、政治的あるいは思想性は逆立ちしていること。
個人を、政治や思想性の方に延長させてしまうと、事故欺瞞になるし、
逆の場合は、進歩的思想になってしまう。(江藤淳との対談)
二つ目。漱石は主人公を相対化している。
自分と同じように西欧近代を獲得しようと懸命になっている知識人に対し、
一種の懐疑を持って退いてしまう。
作中によく出てくる男女の三角関係は、このことの暗喩である。(佐藤泰正)
三つ目。
時代の移り変わりに対して、原則の応用ですむということはない。
時々刻々に対応しながら、そういう中で本当の真理をつかむ態度をとる。
若作りをしているのが嫌だなぁとか、こんな評価をしたら沽券にかかわる、
といったような、いろいろな心理的な思惑を取っ払った上で、
つかみ取らなければならない。(大西巨人)
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