評価:
大恐慌時代、オーウェルは、
パリで貧民になり、ロンドンで浮浪者となる。
本書は、そのルポルタージュである。
日々の暮らしぶりの記述は、さほどではないが、
ふたりの人物の魅力を感じ取ることが出来る。
ひとりは、パリで出会ったボリスである。
もとは金持ちであったが、
ロシア革命で、パリに亡命し、労働者となった。
どん底の生活でも、くじけず、
運を得ようとする好漢である。
もうひとりは、
ロンドンで出会ったボゾである。
ボゾは、
パリでペンキ屋の仕事を見つけ貯金もして、
フランス娘と婚約する。
しかし、その娘はバスにひかれ、
しかも、やけ酒をあおって仕事場に戻ったボノは、
足場から落ちて、右足をぐじゃぐじゃに砕く。
その後、彼は職を転々とし、その日暮らしの身となる。
会話としては、P219〜220が共感できる。
(本書で、一番、感じ入ったところである)。
本書では、感情的な書き方は抑えられているが、
構成により、読者に好き嫌いの判断が委ねられている
(ように感じられる)。
|