評価:
古河財閥の創始者について書かれた本。
市兵衛の自伝や、当時の新聞などをネタに、
書かれている。
全体的には、
ストーリー不足の感が否めなくて、残念である。
その点、司馬遼太郎や城山三郎は、
やはり凄いんだわぁ。
それとタイトルの「運鈍根」という言葉に引かれて
当書を読んでみたが、その辺の感じが、まったくと
言って良いほど、書かれていない。
市兵衛の言った言葉から「運丼根」を引用しただけである。
しかし、市兵衛自身には、興味を持った。自伝があるそうなので、
時間があったら、読んでみたいと思う。
一般的には、足尾銅山を経営した古河市兵衛より、
足尾銅山の環境問題をとりあげた田中正造の方が知られている。
有名な足尾銅山毒事件である。
個人的には、社会活動をした田中正造より、
豆腐売りから実業を起こした市兵衛の方が興味がある。
金持ちで生まれた人が社会活動を行い、
赤貧の生まれの人が実業を行う傾向があるのが不思議。
いまは違うけれどね。
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足尾銅山毒事件は、田中が火をつけて、
足尾の数千人の農民が国会に直訴に出た事件である。
この背景には、明治の農本主義があったのではないか?
工業化が進むときには、農業に帰れという反動主義が現れるからね。
ちなみに、梅棹忠夫氏の本の中で、「情報化が進むときに、
工業に帰れという反動が起こるだろう。これは農本主義に対して、
工本主義と呼んではどうか」と書かれていた。面白い指摘だと思う。
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