評価:
夏目漱石や森鴎外は、けっこう読みました。
だけど、今思えば、文字面をたどるように、
義務感で読んでいたような感じがします。
それに比べると、
永井荷風の本は、肌合いが合うんです。
この小説の主人公、兼太郎は、事業と株に失敗し、
女房からは、離縁されてしまいます。
しばらく、囲っていた、お妾さんの所に
やっかいになるのですが、月日が経つに従って、
じゃまもの扱いされ、ついには、ここも追い出されてしまいます。
ま、背景は、こんな感じでして。
ストーリーは、健太郎が間借りしている長屋近辺で展開します。
いぜん雇っていた人が独立して、そこに、やっかいになり、
細々と収入を得ています。
ある日、健太郎は、昼間っから銭湯に行くのですが、
偶然にも、数年以来あっていない自分の娘に出くわします。
その後、娘は健太郎の長屋にたずねて来てくれて、
晩酌をしてくれます。健太郎は、もう、うれしくてたまりません。
人情もののように、ほろ酔い加減で終わるのか、
というと、そういうわけにはいきません。
なにせ、荷風先生ですからぁ!
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