評価:
榊原英資は、官僚時代、
日本版金融ビックバンを企てた人である。
その背景には、国際化の中でもまれて、
はじめて、日本の弱さや強さが分かってくるという
氏の思想があるように思う。
一方、金融の国際化を提唱している人だから、
マーケット本位の、資本主義を肯定していると思われがちだが、
さもあらん、
「マーケットに任せておくと、ある方向に振り子が行き過ぎるので、
国どうしで、いざというときの、危機管理のシステムを決めておくべきだ」
と本書で述べている。
ところでバブル崩壊後の1992年、時の総理大臣・宮沢総理は、
「銀行の不良債権処理に公的資金を入れるべきだ」と、大蔵省官僚に言ったらしい。
だが、大蔵省は、1)いずれ景気がよくなり株も土地も上がると思っていたこと
2)自分たちの金融行政の否を認めたくなかったこと、から強く反発した。
元金融相の与謝野馨氏によると、
(「正論」2006/7)、平成3年から15年のあいだで、
全金融機関は96兆円の損失を出したそうである。
その内訳は、利益からの償却が72兆、資産の売却が12兆、
公的資金が12兆となるそうだ。
もし1992年の初期の段階で公的資金が投入されていたら、
どうだったろう? 公的資金は、もっと少なかったのではないか。
宮沢喜一という人は、経済を見る目は先見性があると思うが、
いかんせん、行動力がない。銀行課長の首を切るくらいの処理をして
自分の考えを推し進めてくれれば、どれほど、国の利益になったことか。
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