評価:
(書評に対するコメントが書き込めないのだった
なので、新たに、書き込む)
この本には、
もうひとつ興味深いことが書かれている。
シェイクスピアについてである。
シェ翁は、果たして、
存在したか否かというのも、面白いのだが、
それ以上に、なぜ、シェ翁の作品は、
17世紀に入って、陰影がさしてきたか。
その考察が、面白い。
それには、
まず時代背景を抑えていく必要がある。
シェ翁の青年期は、
ルネサンスの波がようやく、北端イギリスにも訪れた時期だ。
さらに、エリザベス期の1588年には、
スペイン無敵艦隊撃破により、国民は解放され、
あたかも「北国の春のように一時に万花が開いた」(同書)のだが、
1603年、女王の死とともに、一転、下降していく。
シェ翁の作品の時期を、時系列的に比べてみると、
前者の時期には、「夏の夜の夢」「ロミオとジュリエット」「十二夜」
などの喜劇が書かれ、
後者の時期には、「ハムレット」「リア王」「マクベス」
といった頽廃悲劇書かれているのだそうだ。
ま、平たい言葉でいえば、作品に時代の雰囲気が反映している
といったところだ。
本書では、いま書いたことと、比べものにならないほどの
名文で、この点について述べられている。
「わがシェイクスピアの生きた時代、そして彼の作品の反映する限りにおいては、こうした解放反逆の主観的意欲がほとんど混沌的に沸騰した一時期だったことは疑いない。むしろ彼が生涯の作品こそ、かかる無限の自我的拡張ルネサンスの行くべきを行くつくし、その極限において再び神の問題を導き出さなければならなかった。いわばその上限と下限を最も如実に反映していると考えるのだ」
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