マドンナの首飾り;橋本みさお ALSという生き方

自伝・伝記・エッセイ
著者山崎摩耶

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がっち [2008年04月17日(木)]

評価:


ALSという、神経の難病により、全身の筋肉の機能が低下し、寝たきりになっている「橋本操」さんのこれまでの人生、価値観、生き方を、看護の経験のある著者が感じたままに綴っている。

元々この本を手にしたきっかけは、私が今同居している友人が、橋本さん(以下操さん)の在宅介護のアルバイトをしているからであるが、その子から聞く、素の操さんのお茶らけたイメージとは裏腹に、これまで彼女が歩んできた厳しい人生、本人、周りの人の苦労などがまざまざと描かれていた。

「尊厳死」について、操さんは反論している。
『人間の尊厳を考えるのは「生き方」の問題であって、けっして「死に方」の問題ではない』とおっしゃっている。また、『個人の“尊厳”とは内なる所有物で、個々人のものだから、百人いれば百通りの“尊厳”があるのが当然だと思う』とも。立法化⇒法制化された「尊厳死」に人間が縛られる。という言葉には、思わずハッとさせられた。

またこの本では、彼女を取り巻く介護についても詳細に述べられている。
日本はまだまだ制度的に整っていない。施設や病院で生活するALS患者の多い中、彼女は在宅で、しかも家族に介護してもらうことなく生活している。
すべて自分の意思で。

人工呼吸器。この本でも大きなキーワードになっているが、
操さんはずっとこの人工呼吸器を付けることを拒んだ。
というのは、人工呼吸を取り付ける=24時間の介護が必要になるという。
そうなったらきっと家族の介護を必要とするだろう。家族の時間を、人生を、自分が縛り付けてしまう。操さんは家族には家族の生活を生きて欲しいとかんがえているのだ。

訪問看護師、保健師、ホームヘルパー、学生アルバイトなど、たくさんの人に支えられて彼女は生きている。
操さんは自分の意思がはっきりしている。ヘルパー達にも何やかんや戸と、時には無謀とも思える注文をしてくる。ヘルパーにあれこれ言うのは、わがままではない。彼らに自分の体の一部となってほしいのだ。なぜなら操さんは自分の体を、動かすことは出来ないのだから。
そんな彼女の元で様々な介護士、看護師たちが育てられ、自身を付けているのだ。そしてそんな彼らは日本各地で活躍していることだろう。

私がこの本を読んで良かったと思えるのは、命の大切さ、尊さに気づくことが出来たからである。
操さんはかなりアクティブだ。大好きな桜を見るために京都へ行ったり、コーヒーを飲みたいからといってミラノに行ったりする。講演などで日本各地、世界にまでも出て行く。彼女のアクティブさはどこから来ているのかというと、やはりALSによる物であろう。いつどうなるのか分からない自分の体、命。精一杯「今」という時間を生きている操さんに、私は自分が情けなく感じた。

まだ20歳だから、学生だからと甘えている自分。
もしかしたら明日交通事故にあってこの足が動かなくなるかもしれない。
もしかしたら明日脳に障害を持つことになるかもしれない。

もしかしたら、ALSという難病と戦うことになるかもしれない。

そうなったとき、今のままの自分でその状況を受け入れられるだろうか。
乗り越えられるだろうか。

恐らく無理だ。

操さんの強く、前向きで、優しい生き方に、本当に生、命、自分というものを考えさせられた。


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