評価:
問いかけの小説「こころ」に対し、
「彼岸過迄」は、須永に感情移入する小説だった。
内向的な須永に対する、叔父の松本の意見を抜粋しておこう。
「内へ内へと向く彼の命の方向を逆にして、外にとぐろを捲き出させるより外に仕方がない。
外にある物を頭へ運ぶために眼を使う代わりに、頭で外にある物を眺める心持ちで眼を使う
ようにしなければならない。
天下にたった一つで好いから、自分の心を奪い取るような偉いものか、美しいものか、
優しいものか、を見いださなければならない。
一口に云えば、もっと浮気にならなければならない」
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