評価:
大正から戦後までの甲州の庶民の暮らしを描いた作品。
どちらかと言うと、
深沢作品は、「楢山節考」や「笛吹川」のような
中世の時代を描いた作品の方が、迫力があるが、
いずれにせよ、
深沢七郎は、もっと、もっと評価されても良いと思う。
この作品では、
戦後のハイパーインフレの輪郭がつかめる。
徳三郎がアメリカで20年働いて、
戦前に故郷の甲州に持ってきたお金が1万5千円。
金利が月に50円付いて、これは当時の教師の給料より高かった。
徳三郎一家は、一生遊んで暮らせるような財政状況だったそうだ。
それが、戦後のインフレで、息子の服の借金の立て替えだけで、
2千5百円取られた。
同書によると、米は1俵、3千2百円だったそうで、
そうすると、徳三郎は全財産で約5俵しか変えないことになる。
現在、農家から1俵買って、2万程度だから、
一生遊んで暮らせる財産が、10万くらいに目減りしたことになる。
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